忘れがたき人
今年に入ってから胃の具合が悪く思い切って胃カメラをすることにした。
調べてみると近所の病院の評判が良いことが分かりではここでと思ったのだが、
ひとつ気になることはここの先生は聞き分けのない患者に結構厳しいということで
それを知る私は「ここかよ……」とすでに暗澹たる思いのなか予約をした。
当日病院に行くと私のほかに小柄なおじいちゃんと、見た目と声が声優の大塚明夫似のいかにも強そうなおじさんがいた。おじいちゃんはともかく明夫は大丈夫そうだ、看護師さんとのやり取りもブラックジャック感が凄い。
病室は患者の緊張をほぐすためか50年代ぐらいのジャズが小さな音で流れている。
胃カメラ検査が始まると予想に反して一番目のおじいちゃんは意外にも終始冷静で、先生も言葉少なに終わった。
最後の私は、二番目の明夫の様子をカーテン越しにうかがいながらぼんやりしていると
どうもおかしい。明夫はめちゃくちゃ緊張していたのだ。
「はじめてなんです……昨日眠れなくて……」
カーテン越しに聞くと本当に弱ったブラックジャックがいるようだ。
がんばれ先生。いや先生ちゃうけど。
検査が始まると相当苦しいようで(本物の)先生にがっちり怒られている声がこちらまで聞こえていたたまれない。
ブラックジャックが消化器系の先生に怒鳴られ、その後ろではナットキングコールの
『アンフォゲッタブル』が優雅に流れていた。確かにそうだろうよと思った。
私は何とか怒られることなく特に異常なしで胃薬を貰うだけですんだ。
検査って大変だね。