ぼんやりの向こう側
若い頃は、いまにもましてうっかりが酷く忘れ物やら失敗やら
なにかと多い生活をしていた。
大人になるにつれ徐々にそれも和らいだかと思われたころ、今度は老化でうっかりが酷くなりトータル人生の大半うっかりしている状態で現在に至る。
しゃんとしていたのは4日ぐらいかもしれない。
振り返るとそれにまつわる思い出がいくつもある。
出かけるときはリュックを背負っていることが多かった。「置き忘れないため」
という理由からだが、リュックのチャックは常に三分の一ぐらい豪快に開いていたため、誰でも摑み取りし放題の状態が常であった。
なのでよくエレベーターなどで立ち止まっている時に、知らない人に
「チャック開いてる!!!」とキレ気味に閉めて貰ったりしていた。
そんなことをされてもボンヤリしているのでされるがままだ。
人間隙があるとそれにつけこみ酷いことをする輩はどこにでもいるものだが、
隙しかない人間は、逆に恐怖を感じるのだ。
若干私が常に加害者だったのかもしれない。
とにかくボンヤリしているから、知らない人に話しかけられることも多い
電車で隣の席に座る知らないおばさんに「うちの孫そろばんしてまんねん」
と言われたことがあった。「へぇ。」と答えるとそのまま喋り続け最終的に、
私は貯金と年金けっこう貰えるから老後は大丈夫という自慢をして電車を降りていった。
はちゃめちゃに貧乏な私は、今の年寄りはいーなーと思いながらまたボンヤリしていた。